クマノミの魅力
クマノミの世界へようこそ。
クマノミはアクアリウムを知らない人でも知っている、おなじみの海水魚。
ゆらゆら揺れるイソギンチャクと一緒に共生し、親魚が稚魚を育てる様子はほほ笑ましく、なんとも心癒される光景を見せてくれます。
クマノミの仲間は世界中の温帯から熱帯にかけて広く分布しています。
もっとも有名な種類としてはカクレクマノミで、ほとんどの人がクマノミと聞いて思い浮かぶのがこの種類でしょう。
クマノミの仲間はカクレ以外にも姿や性質が違う、さまざまな個性を持った種類が世界中の各海域にいますが、一般的にはあまり知られていない種類も多く存在します。
基本的な飼育方法はカクレクマノミを基準とすることができます。
しかし、クマノミの種類によっては適した水槽サイズや共生するイソギンチャクとの相性の違いなど性質に差があり、それぞれが違った趣を見せてくれます。
さらには同じ種類でも個体による模様の変異が多く、ブリードによる品種改良によりバリエーション豊かな模様の品種が多数生み出されています。
飼育するスタイルによって変化するその魅力の奥深さは、淡水の熱帯魚におけるエンゼルフィッシュやディスカスにも劣らないと言っても過言ではないでしょう。
ビギナーからハイレベルなマニアまで幅広く魅了するクマノミの奥深き世界へ。
貴方を誘いましょう。
クマノミとは
分類 | スズキ目スズメダイ科クマノミ亜科 |
体長 | 種類によって差があり |
食性 | 肉食傾向の強い雑食 |
主な原産地 | 世界中の温帯~熱帯海域 |
クマノミはスズメダイ科のクマノミ亜科というグループに属する種類の総称です。
クマノミの仲間は海水魚の中でも一般的な知名度の最も高いグループのひとつと言え、鮮やかな色彩とイソギンチャクとの共生、性転換をするなど個性の際立った特徴を持っています。
その目を引く特徴から、日本のアクアリウムの歴史の中でも古くから親しまれてきました。
それもあり水槽内での繁殖が難しい海水魚の中にあって、一般家庭でも繁殖可能な方法が確立されている種類でもあります。
特筆すべき特徴のひとつが一部のイソギンチャクと共生するということ。
イソギンチャクの刺胞毒をものともせず、気持ちよさそうに触手に潜り込む姿は微笑ましいだけでなく、生物の不思議をも教えてくれます。
そして、もうひとつの特徴は性転換するということ。
若い個体がオスであることが多く、成長に伴い体が大きくなるとメスへと性転換します。
オスメスの違いは色や模様の違いにはあまり現れず、たいていの場合ペアの体が大きいほうがメスと判断できます。
基本的にはペアで行動し、稚魚が生まれたらある程度のサイズに育つまでオスメス共同で子育てをする様子が見られます。
ペアの結びつきが強く子育ても行うという性質から、ペアではない同種同士で激しく争う傾向があります。複数匹飼育する場合は注意しましょう。
これらの性質はクマノミがスズメダイの仲間であることを感じさせてくれます。
オスしかいない水槽では体が大きく強い個体が性転換してメスになることがあります。
狭い水槽では弱いほうが逃げ切れずに殺されてしまうこともありますので、ペアを組ませたい場合は広くて隠れ場所の多い水槽を用意してください。
主なクマノミ
クマノミの種数はとても多く、一部の限られた海域のみに分布するたいへん珍しい種などもいて全て紹介することは非常に困難です。
ここでは、比較的安定した入荷が見られる人気種をピックアップして紹介します。
野生採集個体とブリード個体の違い
クマノミの仲間のうち、流通の多いポピュラーな種類については人工的に繁殖させたブリード個体もよく見かけ、同じ種類でも野生採集個体とブリード個体は別ものとして扱ったほうが良い面があります。
そして、はじめてクマノミを飼育される方はブリード個体をおすすめします。
まずはその理由について解説しましょう。
ブリード個体と野生採集個体を混泳させるときの注意点
ブリード個体は人工の清潔な環境で繁殖されているため自然の海由来の寄生虫や病原菌をもっていませんが、同時に野生採集個体がもつ免疫を持ちません。
そのため、ブリード個体と野生採集個体を同じ水槽に入れてしまうと病気が発生しやすくなる面があります。
特にリムフォシスティス症やトリコディナ症、白点病といった病気の原因となることがあります。
病気の対処に不安がある方は一緒に泳がせないようにしましょう。
これらの理由から、はじめて海水魚を飼われる方はブリード個体がおすすめというわけなのです。
カクレクマノミ
学名:Amphiprion ocellaris
おそらくは最も有名でなじみのあるクマノミで、日本近海では沖縄以南の海で見られます。
クマノミの仲間としては小型の部類に入ります。性格も温和な個体が多く、混泳しやすく飼いやすいクマノミと言えるでしょう。
クマノミの仲間でも最も多く商業ブリードされている種類でもあり、数多くの改良品種が作出されています。
ブリードも容易でバリエーションの豊富さからコレクション性が高く、初心者から上級者まで楽しむことができる奥の深い種です。
カクレクマノミ バリエーション
相性の良いイソギンチャク
※相性には個体による性格差も強く影響します。
種類を選ばず入る個体もいれば、相性の良い種類でもなかなか入ろうとしない個体もいます。
個体の性格によっては下記のイソギンチャク以外でも入る場合があります
ナミクマノミ
学名:Amphiprion clarkii
日本近海では最も多く見られるクマノミで、房総半島以南の海で見られます。
クマノミの仲間では最も分布域が広く、太平洋の広範~インド洋のアフリカ沿岸まで分布しているため海域によるバリエーションが豊富な種類です。
中~大型になるクマノミですので、飼育にはカクレクマノミよりも大きな水槽が必要になります。
なるべく60×45×45cm以上のサイズを用意しましょう。
分布域が非常に広いことから共生できるイソギンチャクの種類がクマノミ中で最も多い種類で、あまり選り好みせずにイソギンチャクに入ってくれる個体が多いのも特徴です。
本来の和名は標準和名はクマノミですが、一般にクマノミというとカクレクマノミを連想する人が多いことから便宜上ナミクマノミとも呼ばれています。
ナミクマノミ バリエーション
相性の良いイソギンチャク
※相性には個体による性格差も強く影響します。
種類を選ばず入る個体もいれば、相性の良い種類でもなかなか入ろうとしない個体もいます。
アクアリウムルートでよく見られる共生イソギンチャクとは一通り共生が確認されています。
ハマクマノミ
学名:Amphiprion frenatus
ナミクマノミに次ぐ広範な分布域を持つ種類で、日本近海では沖縄以南の海で見られます。
クマノミとしては中~大型に入る種類で、鮮やかな赤の色彩と丸っこい体形から英名でトマトアネモネフィッシュとも呼ばれています。
比較的流通量の多いクマノミですが、体高があるため成長するとかなり大きく見えるようになることから、水槽は60×45×45cm以上のサイズを用意しましょう。
また、気が強い個体も多くペアを組むと他の魚を追い払う様子が見られるようになります。
なるべくペアのみの飼育が望ましく、混泳させられる魚は限られてくるため注意しましょう。
本種もカラーバリエーションが多く、コレクション性が高い種類です。
ハマクマノミ バリエーション
相性の良いイソギンチャク
※相性には個体による性格差も強く影響します。
種類を選ばず入る個体もいれば、なかなか入ろうとしない個体もいます。
本種も流通がよく見られるイソギンチャクに選り好みしないで入ってくれる傾向が高いです。
ハナビラクマノミ
学名:Amphiprion perideraion
日本でも沖縄周辺で稀に見られる、淡い体色が特徴のクマノミ。
クマノミとしては小型の部類に入る種類で、カクレクマノミに近いサイズ感で飼育可能です。
目の間あたりから伸びる背中の白いラインが特徴で、英名でピンクスカンククラウンフィッシュとも呼ばれています。
性質は大型になるハマクマノミやナミクマノミよりもおとなしめな個体が多く、他の海水魚との混泳もしやすいのが魅力です。
逆にブリードを狙う場合は他の魚に押し負けてしまうこともあるので、なるべく本種のペアのみで飼育しましょう。
相性の良いイソギンチャク
※相性には個体による性格差も強く影響します。
種類を選ばず入る個体もいれば、なかなか入ろうとしない個体もいます。
個体の性格によっては下記のイソギンチャク以外でも入る場合があります。
セジロクマノミ
学名:Amphiprion sandaracinos
ハナビラクマノミに近縁のよく似た種類です。
こちらは背中の白いラインが口のすぐ上から尾ビレ付け根まで伸び、エラ付近に白線が入らないことで見分けることができます。
また、ハナビラクマノミが淡い肌色~桃色に近い体色が多いのに対し、本種はやや黄色~オレンジがかった体色になることが多いため、英名ではオレンジスカンククラウンフィッシュと呼ばれます。
サイズもハナビラクマノミよりひと回り大きくなります。
本種とハナビラクマノミはクマノミの仲間としては色彩変異が少ないようで、あまりバリエーションが入荷することがありません。
ごく稀に本種に似たインド洋産のakallopisos種がスカンククラウンやスカンクアネモネという名前で輸入されてくることがあります。
近縁種
相性の良いイソギンチャク
※相性には個体による性格差も強く影響します。
種類を選ばず入る個体もいれば、なかなか入ろうとしない個体もいます。
個体の性格によっては上記のイソギンチャク以外でも入る場合があります。
スパインチークアネモネフィッシュ
学名:Premnas biaculeatus
クマノミの仲間で唯一の別属として扱われる(※Amphiprion属に含めるという説もあり)種類。
太平洋からインド洋の熱帯海域に分布しています。
本種の大きな特徴として目の下にトゲ状の突起が発達し、このことから英名でスパインチークアネモネフィッシュと呼ばれています。
クマノミの仲間としては大型になる種類で、最大で15cmを超えます。
飼育には最低でも60×45×45cm以上のサイズを用意しましょう。
また、体が大きくテリトリー意識も強いため他の種類との混泳には向いていません。
特に他のクマノミやスズメダイの仲間とは殺し合いに発展するほどの激しいケンカをすることがあることから、本種のペアのみでの飼育が望ましいです。
本種もブリードにより模様が大きく変わった品種が多数生み出されています。
混泳には向いていませんが、本種のみでじっくり飼いこむことで魅力を味わえるクマノミと言えるでしょう。
スパインチーク バリエーション
相性の良いイソギンチャク
※相性には個体による性格差も強く影響します。
種類を選ばず入る個体もいれば、なかなか入ろうとしない個体もいます。
個体の性格によっては下記のイソギンチャク以外でも入る場合があります。
ぺルクラクラウンアネモネフィッシュ
学名:Amphiprion percula
オーストラリアのグレートバリアリーフ周辺に分布するカクレクマノミによく似た種類。
有名な映画のモデルになったクマノミが本種です。
地の色がカクレクマノミに比べて明るいオレンジ色になる傾向があるため、英名ではオレンジクラウンフィッシュと呼ばれています。
カクレクマノミと非常によく似ていますが、明確な違いは背ビレの条の本数が少ないこと。
本種は9~10本、カクレクマノミは11本(※稀に10本の場合もあり)あることで区別が可能です。
また、各ヒレに入る黒い帯状模様の幅が広いことも特徴となります。
性質とサイズはカクレクマノミに準じており、ほとんど同じ感覚で飼育が可能です。
本種もカクレクマノミ同様、ブリードによりさまざまな模様の品種が生み出されています。
ぺルクラクラウン バリエーション
相性の良いイソギンチャク
※相性には個体による性格差も強く影響します。
種類を選ばず入る個体もいれば、なかなか入ろうとしない個体もいます。
個体の性格によっては下記のイソギンチャク以外でも入る場合があります。
トウアカクマノミ
学名:Amphiprion polymnus
沖縄以南の太平洋~インド洋に分布するクマノミです。
英名ではサドルバッククラウンフィッシュと呼ばれています。
最大13cm前後と中型のクマノミで模様や体形などはカクレクマノミとナミクマノミの中間のような雰囲気を持っています。
体色もバリエーションが多く、黒が多いものから黄色やオレンジが目立つ個体も見られます。
また、同じ個体でも共生するイソギンチャクの種類によって体色の明暗を変える性質ももっていることが確認されています。
他のクマノミがあまり入らないイボハタゴイソギンチャクに好んで共生するなど、ちょっと変わった個性が光るクマノミです。
トウアカクマノミ
相性の良いイソギンチャク
※相性には個体による性格差も強く影響します。
種類を選ばず入る個体もいれば、なかなか入ろうとしない個体もいます。
個体の性格によっては下記のイソギンチャク以外でも入る場合があります。
さまざまな珍しいクマノミ
ここまで紹介したクマノミは、比較的多く入荷が見られるほんの一部です。
クマノミには多様な種類が存在しており、同種であっても産地による地域変異などでコレクション性は高いです。
似たような見た目をしていても生息海域がまったく異なる、別種として記載されているものなども少なくありません。
ホワイトボンネットアネモネフィッシュなど、自然下で生まれた交雑種もいます。
入荷は多いけど知名度が低いもの、年に数えるほどしか入荷しないもの、数年に1回レベルのもの、もしかすると1回きりのもの……
本当にさまざまな種類がいます。
改良品種のクマノミのように、種類は同じでも模様が色が1匹ごとに違う種類も多いです。
ぜひ、お気に入りの1匹を見つけてみてくださいね。
クマノミ飼育の基本
水槽の選択
クマノミの飼育は種類と飼い方によって設備が大きく異なります。
カクレクマノミのような小型種のペアのみの飼育であれば30cmキューブ~の飼育は可能です。
ですが、体の大きいクマノミを飼う場合や混泳をしたいのであれば大きい水槽が必要になります。
また、イソギンチャクと一緒に飼育したい場合は、万が一イソギンチャクが調子を崩した際の水質悪化を考慮して水量に余裕のあるサイズを選びましょう。
※イソギンチャクは死ぬとドロドロに溶けて腐敗臭を放ち、ひどいことになります。 その様子はまさに地獄絵図……。
目的別の水槽サイズは下記の表をご覧ください。
クマノミの種類 | ペアのみ | 他魚との混泳 | ペア+イソギンチャク |
カクレクマノミ | 45cm水槽以上 (30cmキューブハイタイプも可) | 60×30×36cm以上 | 60×45×45cm以上 |
ナミクマノミ | 60×45×45cm以上 | 90×45×45cm以上 | 60×45×45cm以上 |
ハマクマノミ | 60×45×45cm以上 | 90×45×45cm以上 | 60×45×45cm以上 |
スパインチーク | 60×45×45cm以上 | 90×45×45cm以上 | 60×45×45cm以上 |
ぺルクラクラウン | 45cm水槽以上 (30cmキューブハイタイプも可) | 60×30×36cm以上 | 60×45×45cm以上 |
ハナビラクマノミ | 45cm水槽以上 (30cmキューブハイタイプも可) | 60×30×36cm以上 | 60×45×45cm以上 |
セジロクマノミ | 45cm水槽以上 (30cmキューブハイタイプも可) | 60×30×36cm以上 | 60×45×45cm以上 |
トウアカクマノミ | 60×30×36cm以上 | 60×45×45cm以上 | 60×45×45cm以上 |
フィルターの選択
フィルターの種類も飼い方によって変わります。
目的や用途に応じて使い分けましょう。
クマノミだけで飼育する場合
ペアのみの飼育であれば外部式フィルターの使用で問題ありません。
海水水槽では淡水よりもアンモニアの毒性が強くなることから、淡水での推奨サイズよりひと回り以上容量の大きい機種を選びましょう。
エーハイム2215以上のフィルターが安心です
ろ材の洗浄のしやすさを考えて、中に入れるろ材はネットを使ってまとめるとメンテナンスが楽になります。
洗浄の際バクテリアの減少を最低限に抑えるために、2つ以上に小分けにしておくことをおすすめします。
ろ材やアンモニアを無害化する好気性ろ過については別記事にて詳しく解説しています
これらも併せて参照ください。
イソギンチャクやサンゴと一緒に飼育したい場合
イソギンチャクと一緒に飼いたい場合はソフトコーラルが飼育出来る設備が必要になりますので、オーバーフロー水槽を用意しましょう。
システム全体で高額になってしまいますが、ろ過能力だけでなく後々の拡張性やメンテナンス性の高さはズバ抜けています。
拡張機能も高く、ろ過槽に高性能なプロテインスキマーを設置できます
プロテインスキマーの選択
海水水槽ではフィルター以外にプロテインスキマーという機材も使われます。
クマノミなど魚のみの飼育であれば必要ではありませんが、イソギンチャクなどサンゴの仲間や無脊椎動物を飼育する際に必要になります。
将来的にイソギンチャクやサンゴも一緒に飼育したいという場合には、インサンプ型で大型のプロテインスキマーを使えるようオーバーフロー水槽でのセッティングで考えてください。
クーラーの選択
海水魚の飼育には水槽用クーラーが必須です。
海は潮溜まりなどの閉鎖された特殊な環境でない限り、水温が30℃を超えることはありません。
そのため、一般的な海水魚は水温が30℃以上になる環境では長くは生きられません。
さらにイソギンチャクなどサンゴの仲間をはじめとした無脊椎動物は海水魚以上に高水温に弱いため、水温が30℃に達する環境では飼育できません。
水槽用クーラーがない場合、夏場のルームエアコンは常に稼働させる必要が出てきます。
また、ルームエアコンで室温を調整しても水槽内の水温が変動する場合があります。
頻繁な水温の変動は白点病などの発生原因にもなりますので、安定した水温を維持するためにも対応水量に余裕のある機種を選びましょう。
水槽用クーラーの選び方や使い方については、こちらの記事で詳しく解説しているので併せてお読みください。
淡水水槽でよく使われるクーリングファン。
水槽用クーラーと比べて安価な製品が多いことから海水水槽でも使用される方を見かけますが、実はデメリットが大きかったりします。
冷却ファンは、風を送り水を蒸発させた気化熱で冷やします。
そのため海水水槽でこれを使うと蒸発が激しくなり、海水の塩分比重の変動も大きくなります。
海水の塩分比重が不安定だと生体の体力を余計に消耗させてしまいます。とくにサンゴなどの無脊椎動物にとっては大きなストレスになります。
安定した環境で健康に育てるためには、飼育水の塩分比重を変動させにくい水槽用クーラーを使用しましょう。
水質について
クマノミが好む水質は一般的な海水魚が好むもので大丈夫です。
目安としてはpH8前後とします。
pHが8を切って7台に入るようであれば酸性の物質である硝酸塩などが蓄積してきています。
もしくは海水に溶けたカルシウムイオンや炭酸塩が不足している状態なので、まずは水換えを行いましょう。
アラゴナイト系カルシウム添加剤
クマノミ自身にカルシウムイオンはあまり必要ありませんが、どうしても飼育水のpHが7台になってしまう方はカルシウム系の添加剤を使いましょう。
使用上の注意点としては、カルシウム系の添加剤は使い慣れていないと急激なpHの上昇を招いてしまうことがあります。
添加剤の使用に不安がある方はアラゴナイト系の添加剤がpHとKHをゆっくりと上昇させて生体への負担が少ないのでおすすめです。
ただし、生体への負担が少ないとはいっても入れ過ぎは厳禁です。
環境の急変を招かないためにも1日1回、規定量以上は入れないようにしましょう。
安全にpHを上げるアラゴナイト系カルシウム添加剤
アラゴナイトベースの添加剤
ヨウ素も含んだアラゴナイトベース
ハードコーラルにも対応した成分配合
カルシウム+マグネシウム強化型 人工海水
生体に負担の少ない添加剤とはいっても、やはり不安のある方はカルシウムとマグネシウム、KHが強化されたサンゴ用の人工海水を使う手もあります。
これなら水換えのみで添加剤を入れる手間はないので安心して使えます。
pH8以上をキープしやすいカルシウム強化型人工海水
エサ
クマノミは、エサに関してはあまり選好みしません。
人工飼料にも比較的すぐ餌付きます。
従って、一般的な海水魚用の顆粒またはフレークフードで問題ありません。
肉食性の強い雑食性なので動物質を多く含むエサを主食に、食べるようであれば植物質を含むエサを与えても良いでしょう。
食いが悪い個体や、繁殖を控えた個体には冷凍エサを与えると良いでしょう。
小型個体用にはコペポーダ、大型個体にはホワイトシュリンプがおすすめです。
これらの冷凍エサには海産の甲殻類が原料として使われており、野生採集個体への餌付けにも向いています。
また、人工餌で不足しがちなアミノ酸や、EPA、DHAといった必須脂肪酸も豊富に含んでいるため、栄養強化したいときにも便利です。
人慣れしたクマノミはエサをねだってくる様子がかわいいので、ついつい多めにエサを与えたくなってしまいます。ですが、あまり与えすぎると体型のバランスが崩れて内臓にも負担がかかるため、1日1回を目安に控えめに与えるのがポイントです。
混泳
クマノミは海水水槽の混泳水槽でよく姿を見ます。
しかし、基本的にクマノミはスズメダイの仲間でもあるので同種間や体形のよく似たスズメダイ相手に激しくケンカをすることがあります。
混泳水槽でもあまりケンカをしない温和な性格をしたクマノミはカクレクマノミとぺルクラクラウン、ハナビラクマノミ、セジロクマノミの4種です。
カクレ、ぺルクラ、ハナビラ、セジロは大きくなっても比較的温和な性格の個体が多いです
ただし、まれに気の荒い個体もいるので注意しましょう
それ以外の大型になるナミクマノミ、ハマクマノミ、スパインチーク、トウアカクマノミなどはペアを組むとテリトリー意識が強くなって他魚への威嚇が目立つようになります。
これらの大型個体とハタタテハゼのようなおとなしい性格の魚を一緒に入れると、おとなしい魚がボロボロにされてしまう可能性がありますので注意しましょう。
大きく育ったスパインチーク、ハマクマノミ、ナミクマノミは迫力がありますが、非常に気が荒くなる個体もいるため
広い水槽でない限り大型個体は混泳に向いていません
例外はありますが、小型のクマノミであれば比較的安全です。
中~大型のクマノミは組み合わせによって激しくケンカする可能性があると考えてください。
またスズメダイとの混泳は気の荒い種類が多く、クマノミ側が負けてしまうことがあるので混泳はさせないほうが安心です。
クマノミの種類 | スズメダイ | ヤッコ | ハギ | テンジクダイ | ハナダイ | ハタタテハゼ |
カクレクマノミ | ✖ | △ | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
ナミクマノミ | ✖ | △ | △ | 〇 | 〇 | ✖ |
ハマクマノミ | ✖ | △ | △ | 〇 | 〇 | ✖ |
スパインチーク | ✖ | △ | △ | 〇 | 〇 | ✖ |
ぺルクラクラウン | ✖ | △ | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
ハナビラクマノミ | ✖ | △ | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
セジロクマノミ | ✖ | △ | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
トウアカクマノミ | ✖ | △ | △ | 〇 | 〇 | △ |
ヤッコやハギは個体による性格の違いが大きいです
すんなり混泳できる個体もいれば、激しくケンカする個体もいるため、
混泳させる際は特に注意しましょう
繁殖を目的としているときは混泳をおすすめしません。
卵や生まれたばかりの稚魚が食べられてしまうことがあります。
特に他魚との混泳で問題の起こりにくいテンジクダイの仲間も、口に入るサイズの生物を積極的に捕食する傾向があります。
テリトリー意識が薄く、他魚への関心があまりないことから複数種類の混泳に向いているテンジクダイの仲間ですが、意外と口が大きく、口に入るサイズの生物を積極的に捕食します。
とくにパーチ型の体形をしている種類は口が大きく開くものが多いので、数cm程度の小型魚との混泳は向いていません。
クマノミとの混泳は親魚との混泳であれば大きな問題が起こりにくいですが、稚魚が捕食されてしまう可能性はかなり高いです。普段はおとなしく見えても、エサと認識したものがあると急に早い動きになり捕食しにかかる獰猛な一面を持っていますので注意しましょう。
パーチ型の体形をしているテンジクダイの仲間は、普段のおっとりした動きからはイメージしにくいですが
待ち伏せ型のフィッシュイーターとしての一面も持っていたりします
繁殖を目的とした場合は、クマノミのペアのみで飼育をしましょう。
そして混泳の鉄則として「必ずと言い切れることがない」ということを念頭に置いてください。
海水魚には淡水魚以上に個体の性格が出るケースが多く確認されています。
「混泳の相性が良い」「おとなしくケンカしにくい」といわれる種類であっても、非常に希少の荒い個体が稀に出てくることがあります。
そのため混泳させる場合には必ずケンカをしていないか、ケガをしている個体がいないか、しっかりと水槽内の様子を観察するようにしましょう。
メンテナンス時の注意点
フィルターの洗い方
フィルターの洗浄は一般的な熱帯魚水槽と同様です。
ろ材に付着したバクテリアが死滅しないように、水換えで排出した水槽の水を使って汚泥をすすぎ洗いします。
この時、絶対に水道水で洗い流してはいけません。
海水水槽は淡水水槽よりもアンモニアの毒性が強くなるため、ろ過バクテリアが減少しすぎないよう注意を払う必要があります。
プロテインスキマーと併用していればフィルターのろ材を丸ごと洗浄しても問題は起こりにくいですが、フィルター単用の場合はろ材ネットで内のろ材を2つ程度に分けておきましょう。
片方ずつ洗浄することで、ろ過バクテリアの減少を最小限に抑えることができます。
外部式フィルターのメンテナンスについてはこれらの記事も併せてお読みください。
海水の塩分比重を計るときの注意点
クマノミは海の魚なので、飼育には海水の塩分を計る必要があります。
アクアリウム用の塩分濃度比重計には主に4種類があり、使い勝手や精度などそれぞれに特徴があります。
そのどれもが使用するにあたって共通の注意点があります。
それは海水の塩分比重を計る前に真水の比重を計って1.000の数値を示すのを確認すること。
これを確認しないと塩分が正確に計れているかがわかりません。
なぜなら長く使っているうちに表示する数値がズレてくることがあるためです。
クマノミのような海水魚のみであれば比重に若干のズレがあっても深刻な事態にはなりにくいのですが、イソギンチャクやサンゴは1.020未満の数値で急に状態を崩してしまいます。
イソギンチャクやサンゴが死んでしまうとドロドロに溶けてしまい、急激な水質悪化によりクマノミも含めた水槽内の生物が全滅してしまうことにも繋がりかねません。
お使いの比重計が正確な数値を示すかどうか、必ず確認してから計測するようにしましょう。
淡水(真水) | 汽水 | 海水 |
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1.000 | 1.008~1.018 | 1.023 |
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