システムLED <初心者のための照明ガイド Vol.2>

製品解説
製品解説飼育器具

初心者のための照明ガイド、第2回目。
今回は上位グレードとなるシステムLEDについて解説していきます。

前回のライン型LEDのイメージを一新するかのような機能を多数備えた、高級機といえるシステムLEDの機能についても触れていきましょう!


システムLEDとは

近年、マリンアクアリウム用の照明として主流になってきた機種です。
主に海水魚中心の水槽よりもサンゴを中心としたリーフタンクで使われています。

大きな特徴はスマートフォンのアプリを使って調光とタイマー制御ができること。
そしてサンゴの育成や色揚げに必要な光の波長と、PAR(光合成有効放射)を考慮した照射角を備えた設計になっています。

ボルクスジャパン「Grassy CoreX」
ライティングコントロール系
エコテックマリン「Radion XR30 G6 PRO」
LED構成と設計構造

機種によって仕様の違いはありますが、1台で光のコントロールも行える完結した作りになっているのが共通しています。細かい電子制御を行うための作りから、高価な製品が多いハイエンドモデルといえる機種です。

設置形式はLED登場前にサンゴ水槽のメイン照明であったメタルハライドランプに近い吊り下げ式や、専用のアームを使ってマウントする方式が主流となっています。

総じて、海水魚中心の水槽よりもサンゴの育成に重点を置いた設計となっています。

アプリで調光コントロールするフルオートモデル

レッドシー「ReefLED」のコントロールアプリ

システムLED最大の特徴がこれです。
色の違うLED素子毎に独立したチャンネルになっており、色別に調光、タイマー管理が可能となっています。

ボルクスジャパン「Grassy CoreX」のコントロールアプリ

そして色別の強弱を変える調光機能だけでなく、1分単位でタイマー制御する機能も備わっています。
製品によっては世界中の海中の光や、月の満ち欠けまで計算した月明りを再現している特殊なプリセットコントロールを搭載しているものもあります。

これらの機能によって、自然の海中に近い照明コントロールが可能になっているのです。

maxspect「MJ-L165 LED」の
月明り再現モード
同じくmaxspect 「MJ-L165 LED」
照明順化(強光障害防止)モード

サンゴの成長と色揚げを重視したLED素子構成

maxspect「MJ-L165 LED ブルー」のLED素子構成
6ch別に調光とタイマーコントロールが可能
ボルクスジャパン「Grassy CoreX 200」のLED素子構成
8ch別に調光とタイマーコントロールが可能

システムLEDはサンゴの育成に特化した素子構成となっています。

ひとえに青系の光といっても、緑に近いシアン、明るい青のブルー、深い青のロイヤルブルー、紫に近いバイオレット、果ては紫外線であるUVAなど、さまざまな領域のLED素子が使われています。
これは海中の光を再現し、サンゴの色をより鮮やかにするための構成なのです。

また、色だけでなくLED素子自体も高品質なものを使用しているのも特徴のひとつです。
ブルーハーバー「SPECTRA」は、CREE社など世界的に見てもトップレベルに高品質なLEDメーカーの素子を採用しています。

ブルーハーバー「SPECTRA」のLED素子
CREE社、Lite-On社、EPILEDS社といった世界的に知られたLEDメーカーの高品質な素子を採用しています

こだわり設計のリフレクターとレンズ

あまり触れられない重要な要素としてリフレクターとレンズの存在があります。

システムLEDはサンゴの成長を重視した設計となっているため、LED素子の種類だけでなく光がどのように散光されるかまで計算された作りとなっています。

ブルーハーバー「SPECTRA」
LED素子と専用の「Vビームリフレクター」
ボルクスジャパン「Grassy CoreX」
LED素子とレンズ
エコテックマリン 「Radion G6」
レンズと照射角のイメージ図

各メーカーそれぞれで独自に工夫を凝らしてサンゴが必要とする光の波長だけでなく、PAR(光合成有効放射)を重視した散光の設定にしています。

ブルーハーバー「SPECTRA」が採用している「Vビームリフレクター」による散光イメージ
光が水槽の内側で効率的に反射する設計となっており、T5蛍光管に迫る散光を再現しています

これについての詳しい解説はサンゴのための照明回で触れる予定ですので、お楽しみに!

ボルクスジャパン「Grassy Solar」におけるマルチカラーシャドー抑制イメージ

また、LEDの色が重なった影ができるマルチカラーシャドーという現象があります。
これは複数の色の異なる光源が並列していることで発生する多重影で、光源の色ごとに影がズレて生じるものです。

従来の多色LEDに付き物のマルチカラーシャドーでしたが、専用に設計されたレンズやリフレクターによって光が複雑な角度で散光されることで解消されるようになりました。

これにより水槽内からギラギラしたちらつきが消え、より自然な見た目の光に近づいたのです。

使用する水槽サイズの目安

製品によって出力や照射角が違うため一概には言えませんが、標準的なシステムLED1台でW60×D45×H45cmの水槽までが目安となります。

ライン型LEDは水槽の上に直置きするものが多いため照射角は120°のものが多いですが、システムLEDは吊り下げやアームで保持する形式を採用しているため照射角が90°のものが多く見られます。
※製品によって90~130°の間でバラつきがあります。必ず確認しましょう。

メーカー純正のアームでは高さを計算した設計になっていますが、吊り下げで設置する場合は照射角を確認して高さの位置を決めます。

照射角90°の製品を使用したイメージ図
水槽のやや上からの照射を想定した設計となっています。

W90×D45×H45cm水槽では2台。
W120×D45×H45cm水槽以上の大型水槽では3~4台の使用が、おおよその目安となります。

使用台数と設置の間隔は機種により変わりますので、必ず仕様を確認しましょう。

レッドシー「REEFER MAX 900」(W200×D65×H65cm)でのメーカー推奨設置例
照明は「ReefLED 160」を3台使用

ハイエンドモデルのポイント

以上のようにシステムLEDは、まさに至れり尽くせりのサンゴのための照明といってよいでしょう。

気になる平均的な価格帯は¥1台70,000~¥180,000程。
最上位モデルにまでなると¥200,000に届くほどになります。

ちょっとしたフルサイズ一眼レフカメラのボディが買えてしまう価格帯ですね。
まさに高嶺の花……

システムLEDの特徴、ポイント

▶LED素子ごとに強さを変える調光とタイマー制御がワンセットになっている。
▶サンゴの飼育に適した波長のLED素子を複数搭載。
▶設置法式は水槽に取り付けるマウントアーム式か吊り下げ式。
▶ミドリイシなど繊細な光環境が必要なサンゴ飼育向けの機種。

デメリット

▶ワンセットで完結し性能も高いものが多いが、高価な機種が多い。

チャームでの価格帯

主な価格帯は¥48,000~¥200,000。
※上記価格帯は記事公開時点(2023/9/15)のものとなります。


チャームで取り扱い中のシステムLEDを見る。

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小型水槽用モデル

コンパクトサイズながら強力な出力を持つ、ボルクスジャパン「Grassy Solar Reef」
※JIS照度で8710lx、簡易照度では12000lx

小型水槽にも使えるコンパクトなモデルもあります。

見た目は小さいですが機能はハイエンドモデルそのまま。
アプリによるライティングコントロールもしっかり搭載しています。

しかもLEDのパワーもあり、30cmキューブ水槽のハイタイプ(高さ60cmまで)や45cmキューブ水槽もカバーできるほど。

本体がよりコンパクトなため、水槽上部のスペースを空けたい場合にも活躍してくれます。

システムLEDをそのままサイズダウンした仕様

ボルクスジャパンGrassy Solar Reef
Aqua IlluminationAI PRIME 16HD

ボディは小さめのコンパクトサイズですが、搭載しているLED素子の色は幅広く、サンゴの成長に適した構成をしています。

多くのシステムLEDはW60×D45×H45cm水槽での使用を想定しているため、幅40cm以下の小型水槽ではオーバースペック気味になってしまいます。

サンゴの健康状態によっては光が強すぎると照明焼けを起こすこともあることから、30cmキューブ水槽などでは小型水槽用の機種を使いましょう。

小型水槽用モデルのポイント

小型水槽用は文字通りの小型モデルで、用途は主にW60×D45×H45cm水槽以下のサイズの水槽を対象としています。30キューブ水槽のハイタイプ(W30×D30×H45cm、もしくはW30×D30×H40cm)では、より小型の製品を選ぶのがおすすめです。

システムLED 小型水槽用モデルの特徴、ポイント

機能はハイエンドモデルそのまま。アプリによる複雑なライティングコントロールも可能。
本体がコンパクトなので、水槽上部の空間を大きく取れる。
▶30cmキューブハイタイプ(高さ45cm)
など、小型水槽でのサンゴ飼育に向いた仕様。

デメリット

▶システムLEDと同じ制御系を搭載しているため、小型水槽向けのスポット型LEDと比べて高額。

チャームでの価格帯

主な価格帯は¥30,000~¥45,000。
※上記価格帯は記事公開時点(2023/9/15)のものとなります。


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廉価版モデル

ZOOXOPTIMUS ReefNano2
マーフィードNEMO LIGHT 2

「システムLED、良さそうだけど高いなあ……。」という方も多いかと思います。
かく言う筆者もそうそう気軽に買えるものではありません…。

そこで、ありがたい存在なのが廉価版モデルのシステムLED。

ハイエンドモデルのシステムLEDから複雑なアプリ制御部分を外して、本体や付属のコントローラーで調光することでコストを下げたモデルです。

ローコストモデルとはいえ、サンゴが成長に必要とする波長域のLEDをしっかり搭載しており、チャンネル毎のコントロールも可能です。

「OPTIMUS ReefNano2」のLED素子構成

しかし、本格的な色揚げをする場合、サンゴの色によっては必要な波長が不足することがあります。

具体的にはRFP(蛍光レッドタンパク質)YFP(蛍光イエロータンパク質の色揚げに欲しい570nm(黄色)~480nm(シアン)の光と、400nm前後のUVA領域が不足しやすい傾向が見られます。

デフォルトの光でRFPやYFPの色が出ないことはないのですが、下記の画像のように派手な蛍光レッドや蛍光イエローなどを出すには若干役不足な面は否めません。

このような派手な蛍光色を出したい場合は、やや不足気味
RFP(蛍光レッド)を持つエダコモンサンゴ
YFP(蛍光イエロー)を持つミドリイシ
YFPとRFP両方を持つハナサンゴ

とはいえ、全ての蛍光タンパク質の基本となるGFP(蛍光グリーンタンパク質)を強く出すための波長をしっかり含んでいることから、派手な色揚げにこだわらなければ問題はありません。

GFP(蛍光グリーンタンパク質)を出すには充分な性能を持っています
GFPを持つナガレハナサンゴ
GFPを持つサンゴイソギンチャク
GFPを持つスターポリプ

サンゴを初めて飼うという方にとって、非常に高価な製品が多いシステムLEDをいきなり購入するのは大きな壁になることが多いかと思います。

そこで最初は比較的安価なこのタイプの照明を使い、基本的なサンゴを飼育できるようになってから必要な色の照明を追加するという方法でも大丈夫です。

USAブリードのミドリイシやマメスナギンチャクといった派手な蛍光色を持つフラグサンゴの色をしっかりと出したいのであれば、必要な領域の光を補色用のスポットLEDなどで補ってあげましょう。

付属コントローラーでの調光

ハイエンドモデルのような複雑なライティングコントロール機能は搭載していませんが、付属のコントローラーによる段階で分けた調光が可能です。

ライン型LEDの調光式のようにスマートフォンのアプリ操作が苦手な方でも安心して使える仕様となっています。海外製アプリに見られる日本語に対応していなかったり、アップデート時の不具合に左右されるリスクがないというのも強みと言えますね。

「OPTIMUS ReefNano2」のコントローラー
「NEMO LIGHT 2」のコントローラー
メーカーによる「OPTIMUS ReefNano2」の説明動画

廉価版モデルのポイント

廉価版システムLEDはミドリイシやLPS、マメスナギンチャクを色鮮やかに発色させるには単体だと少し役不足になってしまう場合がありますが、一般的なソフトコーラルやハードコーラルを健康に育てるには充分なスペックを持っています。

より鮮やかな蛍光色を出させたいのであれば、不足しがちなUVやシアン、グリーン、アンバーといった領域の波長を持ったスポット型LEDと組み合わせて使うのもおすすめです。

システムLED 廉価版モデルの特徴、ポイント

▶調光とタイマー制御を本体付属のスイッチで行うため、コストパフォーマンスに優れている。
▶ハイエンドモデルほど幅広くはないが、普及種のサンゴ飼育に必要な波長は備えている。
一般的な海水魚ソフトコーラルを中心とした混泳水槽向き。

デメリット

▶本体付属のコントローラーで制御するため、スマートフォンなどによる遠隔操作は不可。
▶1分単位の複雑なタイマーコントロールはできない。
派手な蛍光色を持つサンゴの色揚げをする場合には必要な光の波長が不足しやすい。

チャームでの価格帯

主な価格帯は¥14,000~¥58,000。
※上記価格帯は記事公開時点(2023/9/15)のものとなります。


チャームで取り扱い中の廉価版システムLEDを見る。

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まとめ

今回は第2回目、高級機種であるシステムLEDについて解説しました。

サンゴが必要とする光のスペクトルをカバーしたLED素子構成と、1分刻み+LEDの色別(あるいはch別)に複雑なコントロールが可能となっている多彩な機能が盛り込まれた機種がシステムLEDです。

一言では「サンゴを健康できれいに育てる」を念頭に置いた仕様となっているといえるでしょう。

そして、システムLEDの中にも複雑な機能を外してコストを抑えた製品も存在しています。

システムLEDにおいても製品の特長を把握しつつ、どの機能どのような生物の飼育に適しているかを知ることが失敗の少ない選び方につながります。

搭載された機能が、飼育する生物に適した機能であるかをしっかり確認しましょう。

飼育生体別 システムLEDの選び方

システムLED ⇒ 色揚げ重視のサンゴ飼育向け
・サンゴの飼育と色揚げに適した幅広いスペクトルの高品質なLED素子を採用。
・アプリ制御で調光(強弱の調整とタイマー制御)機能を搭載し、複雑なコントロールが可能。
・機能が豊富で性能も高いが、その分だけ高額な機種が多い。

廉価版システムLED ⇒ 海水魚中心水槽、もしくはソフトコーラルとの混泳向け
・使い勝手を重視したコントローラーでのシンプルな調光やタイマー機能を搭載。
・サンゴの育成には適しているが、色揚げに関しては若干不十分なところがある。
・機能を省いたことで低コスト化し、上位モデルと比較して安価になっている。

次回の <初心者のための照明ガイド> はスポット型LEDについての解説を予定しています。

その後に海水魚やサンゴ、海藻といった飼育する生物別に適した照明についても触れていきますので、楽しみにお待ちください

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